須賀川市/F様邸

お母様との同居を機に、実家を建て直す。

F様ご夫妻と、3人(現在、小学生2人・幼稚園児1人)のお子様たちが、ひとりで暮らしておられたF様のお母様と同居するのを機会に、実家を取り壊して2世帯住宅を新築することになりました。

F様は、さっそく建築家の川崎芳弘さんに連絡をとります。じつは、川崎さんは、F様の高校時代の同級生であるだけでなく、卒業後も交流が続いている親しい友人です。もっとも、当時、札幌の設計事務所に勤務していた川崎さんの、建築家としての仕事ぶりについては、F様に何の判断材料もありませんでした。しかも、打ち合わせの多くはメールやファックスでのやりとりになります。にもかかわらず、迷うことなく川崎さんに設計依頼します。
「F君から、建て替えについて最初に話があったのは、たしか5年前でした。かなりタイトなスケジュールを考えていたようなので、あまり急がないほうがよいのではとアドバイスしました」。

8年間、お姑さんを介護した経験から。

須賀川市ののどかな田園地帯。木立の傍らに建つ農家を取り壊して2世帯住宅を新築したF様邸。周囲になじむ外観ということで、外壁にはヒバの木が使われていますが、カタチはとてもモダンです。周囲に伝統的な様式の家が多いなかで、若いご夫妻はともかく、お母様に抵抗はなかったのでしょうか?

「まったくありませんでした。周りの古い家はそうでしょうが、新しく建つ家は、ホント、色んなカタチがありますからね。私よりずっと永く住むことになる息子夫婦や孫たちが気に入ればいいんです」
そんなお母様がこだわったのは、「自分の居室になる和室が8畳以上」、「バリアフリー」、「廊下やトイレが広いこと」。和室の広さは「モノを置けば意外と狭くなってしまう」という明快な理由ですが、あとは、「8年間、お姑さんの介護をした」経験によるところが大きいようです。

高校時代から遊びにきていた川崎さんは、「お母さんがとにかくお元気だし、予算的なこともあるので、それほど切実には考えていなかったのですが、でも、やっておいてよかったと思っています。2世帯住宅には不可欠なことです」。もっとも、いま現在バリアフリーの恩恵に浴しているのは、お母さんではなく、3人のお子様たちです。
「ここへ越してくるまでは、2DKのアパートでしたから、子供たちは、家の中ではゲームばかりしていました。今は、外はもちろんですが、家の中でも走り回っています」と奥様。

つかず離れずの、ほどよい距離を実現した中庭。

F様ご夫妻も、お母様も、2世帯同居に対する考え方は、「つかず離れずの、ほどよい距離」でした。まさに2世帯同居の極意と言えますが、問題は、それをプランとして、どう具現化するかです。ほどよい距離といっても、計測して数値化できる性質のものではありません。
「ご要望を整理してゾーニングしていくと、正方形に近い家になるんです。ところが、正方形だと、どうやっても、いい感じの2世帯になりません。とくに、採光に偏りができてしまうのです」──そこで、川崎さんは、家の中央に中庭を作ることを提案します。

F様一家は、最初から「吹き抜けは作らない」方針だったそうです。中庭は、家の真ん中に屋根のない空間を作るわけですから、考えようによっては、吹き抜け以上に大胆なプランです。ところが、中庭は意外にスンナリとN様一家に受け入れられました。
中庭案の採用によって、F様ご夫婦も、お母様も、そして、川崎さんも納得の2世帯住宅が実現したのです。

こだわった風呂に、1人で入ったことがない。

完成したのが一昨年(2008年)の秋ですから、入居されて1年半以上が過ぎたわけです。もっとも、ご主人のF様は、仕事の関係で、家に戻れるのが2日に1度。「私だけが、まだ1年も住んでいないことになります。その分、家族より新鮮な気分かな」(笑)
実家を建て替えたとはいえ、新しい家の主はF様です。そんなF様に、「家を建てたことを実感するのは、いつですか?」とお訊ねすると、「キッチンに立ったときかな」という答えが返ってきました。以前から、キッチンに立つことは「珍しいことではない」そうですが、「まだIHに慣れなくて…。そんなとき、家が新しくなったんだなぁと…」
建築家から同級生に戻った川崎さんが、「おいおい、そんなときにしか、家を建てたことを実感できていないのか」(笑)とからかいます。
奥さんが助け船を出します。「風呂にこだわったじゃない。バス・タブを大きめにしたり、窓を低くしたり、タイルを自分で選んだり…」
緊張を強いられることの多い仕事です。しかも、職場に泊まる日はシャワーで済ますので、自宅での入浴は、貴重なリラックス・タイムのはずです。しかし、2日に1度しか帰宅しないパパをお子様たちが離しません。未だに1人で風呂へ入ったことがなく、ちょっと大きめを奮発したバス・タブも、ありがたみがないそうです。

仕切りを開け放った1階は、子供たちの運動場

玄関を入ると、正面が玄関ホール。その突き当たりが中庭。ホールの右側がご夫妻一家のリビング・ダイニングで、左側が和室もあるお母様の居室。どちらにもキッチンがあり、中庭の裏側にまとめられたサニタリーは共用です。と書くと、細かくセパレートされた空間をイメージされるかもしれませんが、ほとんどの場合、すべての仕切りが開け放たれているので、1階はほとんどワン・ルーム状態。ワンパク盛りの3兄弟にとっては、ほとんど運動場です。
中庭の壁は、樹脂製の波板で、家中にたっぷりと陽光を取り込んでいます。床はウッド・デッキになっていて、時折バーベキューを楽しんでいらっしゃるそうです。

経年劣化の度合いがきわめて少ないという樹脂製の波板は、ビスを緩めるだけで取り外すことができるので、将来のゾーニング変更にも簡単に対応できる」とのこと。
「家中が明るいし、風は通るし、廊下は広いし、とっても快適です」という奥様の言葉が、2度目の夏を迎えたF様邸の総括と言えそうです。